仕事がら知人にお子さんが産まれて、教育資金について相談を受けたりすることがあります。
以前ならば、子供が産まれたら学資保険に入るというのが当たり前の時代もありました。ただ最近は、低金利で昔ほど利回りがよくないため、支払った保険料より満期保険金が少ない事当たり前になってきました。最近は学資保険以外で子どもさんの学資金の準備を考える人も多くなっています。
しかし、誰に相談したらいいのか考えてるうちに面倒くさくなって、そのまま…という人もいらっしゃいます。今回は下記のような人の参考になればと思い考えてみました。
- もうすぐ子どもが産まれる予定の人
- 最近子どもが産まれて家族が増えた人
- 学資保険を検討していたけど、そのまま放置している人
子どもさんが中学生や高校生という家庭は時間がありません!(笑)ひたすら普通預金にお金を貯めましょう
学資保険は利用した方がいいのか?
結論から言うと学資保険は必要ないかなと思ってます。だからと言ってお金を貯める必要がないということではありません。
学資保険で貯める必要はないということです。
学資保険とは?
まずは学資保険の簡単な仕組みを再確認したいと思います。
学資保険とは学資金を貯める目的で加入する積立保険です。
多くの場合、18歳など学資金が必要になる時期に満期保険金として積立てたお金が支払われます。また、小中高に入学するひとつ前の学年の時に生存一時金が支払われたりする商品もあります。
いちばんのメリットは、積立期間中に契約者である父親や母親などが死亡したり、一定の要件に該当する重度障がいになると保険料の払い込みが免除されます。
つまり、契約者が死亡した場合、満期保険金が支払われるまで「契約はそのままでお金は払わなくていいよ」となります。(この保障が付いていない契約もありますので確認は必要です)
要は積立てに契約者の死亡保障が付いた保険商品です。
さらに、最近は低金利のため日本より金利が高い外貨建ての保険を利用して、学資金を準備するという案内をしている金融機関も多くなっています。
学資保険が不要な理由
払込んだ保険料より満期が少ない商品もありますが、返礼率が高いものだと払込総額の106%くらいある商品もあり(2020年4月現在)魅力的にも感じます(低金利で徐々にそういう商品も姿を消していってます)
しかし、0歳~18歳の18年間で6%しか増えないという事は年利0.3~0.4%程しかありません。
投資信託などで運用すると、年間平均5%程のリターンがあります。さらに資金拘束されるため原則満期まで払い出すことができません。
生存一時金があるタイプを選んだとしても、決められた時にしか支払われないため自由度がありません。
つまり、積立保険を利用するとお金を自由に使う権利を保険会社に奪われてしまいます。
どうしてもお金が必要な場合は、解約か貸付などで使うことも可能ですがペナルティーとして返戻金が少なくなったり、貸付利子を払う必要があります。
自分のお金なのに…
外貨建て保険の危険性
さきほども説明したように、長期にわたる低金利の影響で、保険会社も利回りの高い保険商品の販売が出来なくなっています。そこで最近は外貨建ての保険を販売しており、店舗型の保険代理店や金融機関でも積極的に販売されています。
米ドル建ての終身保険を学資保険のとして利用しませんか?
こんな事いわれると魅力的な気がします。
しかし、デメリットが大きすぎるため絶対に利用はお勧めしません。
・外貨に交換する時と円に戻すときにそれぞれ手数料がかかる
・為替の影響を受けるのでお金が必要な時に円高だと元本割れする
・保険会社に高額な手数料を手数料を取られる
外貨の交換で手数料を取られた上に保険会社からも手数料を取られ、為替の影響を受けて増えるかも減るかもわからないので安心してお金を預けることはできませんね。
「円安のリスクに備える」という考えも、外国株式の投資信託を保有すれば十分対応できます。
「外貨建て保険に詳しいFPに相談してみよう」なんてありますが、そのFPも将来の為替がどうなるかなんてわかっていません。
保険は保険、貯蓄は貯蓄、分けて考える
本来、保険は万が一の事があった時に、自分が賄えないくらいのお金を準備するためのものです。掛け金は少額でなければいけません。
もしも、自身に万が一の時に子どもの学資金が準備できなくなるようであれば、それは死亡保険で用意するべきです。
そして学資金の準備はいつ子どもにお金が必要になってもいいようにある程度の流動性(いつでもおろせる)なければいけません。
投資信託と預貯金で積立てる
学資金はどうしても「元本割れはしたくない」という人は預貯金で積立てましょう。お金は確実に18年間積立てられていきます。
しかし過去20年間、大学や専門学校などの費用は物価の上昇よりも早いペースで年々上昇し続けています。
例えば、せっかく積立てたお金が18年後に現在の価値の2/3程度しかなければ残りの1/3はどこからか調達してこなければいけなくなります。
そうならないためには「つみたてNISA」などの制度を使ってお金に働いてもらいながら学資金を準備することが必要だと思います。
18歳までの積立をシミュレーションしてみる
毎月30,000円を学資金として18年間積立てていくと考えて3パターンをシミュレーションしてみました。元本の総額は6,480,000円になります。
- 全額を投資信託で積立てる
- 投資信託と預貯金を半分ずつ積立てる
- 投資信託と預貯金を3:7で積立てる
あくまでもシミュレーションなのでわかりやすさとシンプルさを重視するために前提として下記を条件に考えています。
- 投資信託は株式のインデックスをイメージして年平均5%のリターンがあると考える
- 預貯金は金利は0で考える
- 途中払い戻しはしない
- 税金は考慮しない
- 厳密な計算をするとイメージが難しいため分かりやすさを重視(細かいところをつつくのはご容赦下さい)
1.全額を投資信託で積立てる
全額を投資信託で積立てた場合、年平均リターンが5%だと18年間で1,047万円になります。
しかし、仮に18年後に暴落がきて35%下落したとしても681万円になります。さすがにリーマンショック級の大暴落があると471万円にまでなってしまいます。反対に暴騰すれば35%上振れしますので1,414万円ほどになる可能性もあります。
リーマンショック級の大暴落がある可能性がないとは言えませんが、100年に一度の大暴落と言われたとおり確率から言えば1%以下なのであまり悲観しすぎると、投資が出来なくなりますね。
上記から考えると18年後には確率から行けば95%くらいの確率で約681~1,414万円の間に収まることになります。
金額 | |
元本 | 6,480,000円 |
暴騰 | 14,142,682円 |
平均リターン | 10,476,061円 |
暴落 | 6,809,439円 |
リーマンショック級 | 4,714,227円 |
2.投資信託と預貯金を半分ずつ積立てる
次に半分ずつ積立てたとして考えていきます。18年後、年間平均5%のリターンがあるとして投資信託で積立てた部分が、523万円と預貯金が324万円で合計847万円になりました。
同じく18年後に暴落が来て35%下落したとすると664万円となり、全額投資信託で積立てるより若干リターンが悪くなりましたが、元本は割れていません。リーマンショック級の大暴落があると559万円となり下落幅は少なくなりました。もちろん暴騰して価格が上がっていたとすると1031万円になり上昇幅も少なくなりました。
金額 | |
元本 | 6,480,000円 |
暴騰 | 10,311,340円 |
平均リターン | 8,478,030円 |
暴落 | 6,644,719円 |
リーマンショック級 | 5,593,500円 |
3.投資信託と預貯金を3:7で積立てる
最後に投資信託と預貯金を3:7で積立てます。18年後投資信託で積立てた部分が314万円と預貯金が453万円となり合計767万円になりました。
18年後に暴落がきて35%下落したとすると657万円となりほぼ積立額と同じになりました。リーマンショック級の大暴落がきたとすると594万円となり元本に近くなりました。暴騰して価格が上がっていたとすると、877万円と上昇幅はだいぶ少なくなり手堅い感じになりましたね。
金額 | |
元本 | 6,480,000円 |
暴騰 | 8,772,804円 |
平均 | 7,672,818円 |
暴落 | 6,572,831円 |
リーマンショック級 | 5,944,268円 |
リスク許容度を考える
上記はざっくりしたシミュレーションで、みなさんわかっていらっしゃるように実際に未来がこうなるという予測ではありません。
確率は低いにせよ結果的にどのパターンでもリーマンショック級の大暴落がくると元本割れしてしまいました。
しかし、もしも元本割れしない預貯金のみで積立てていたとしても、教育費がインフレしていればお金の価値としては目減りしてしまっています。
たまたま、18年後にリーマンショック級の大暴落がくる確率と学費がインフレして積立金の価値が目減りしてしまう確率を考えると、おそらく後者の確率の方が高いのではないだろうかと個人的には考えてしまいます。
リスク許容度が高く、全額投資信託で積立てるという方はもちろんどんどん積立てて頂いていいと思います。私自身もそうしています。
ただし未来に「絶対」という事はありえないので、将来的に自身のリスク許容度を超えそうだという方は以下の二つの方法を検討されてはどうでしょうか。
- 最初から預貯金の割合を高くして積立てていく(2:8や3:7くらい)
- 最初は投資信託の割合を高くして積立てていき、リスク資産の金額が自身のリスク許容度を超えたら預貯金にシフトしていく
2つ目の項目は少しわかりにくいと思いますが、自分が「50万くらい値下がりしても大丈夫」と思っているのであれば投資信託の残高が150万円になったら残りは預貯金で積立てるという方法です。
この方法であればリスク資産を長期で保有することができますし、お金がかかる中学生、高校生の頃に資産を取り崩しやすくなります。
我が家もスパッと解約
実は我が家も7歳と5歳の子どもがいるのですが、某有名保険会社の学資保険に加入していました。しかし数年前にスパッと解約して積立て投資に変更して私の死亡保険金をほんのちょっとだけ増額しました。
当然中途解約ですので学資保険の解約返戻金は85%程になりましたが、掛けた期間が数年と短かったため少ない損失で済みました。
ただ、この決断で何より大きいのは投資の機会損失をしなかった事だと思います。解約返戻金の損失を嫌ってそのまま学資保険を保有すれば投資の市場にお金を置く期間が短くなってしまいます。
決めたら一日でも早い方がいいと思いすぐに行動しました。
人の数だけリスク許容度はありますし、自身の年齢、健康状態、子どもの年齢などでそれぞれ条件が違いますので全ての家庭に当てはまるわけではないですが、これから出産予定の方や出産したばかりの方、お子さんが小さい方は学資保険にこだわらず、より合理的な方法を検討する事も必要なのではないでしょうか。
学資金は誰のために積立てるのでしょうか。自分のため?親戚の保険屋さん?代理店のFP?それともお子さんのため?
我が家ではいちばん大切な人のために決断しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!